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生きる力を育む双六普及活動

珍しく、うちのデザイナーが悩んでいました。
彼女は、平素あまり悩みません。
迷いもなく、答えを出します。

「馬鹿な考え休むに似たり」
「どうせ答えは一つなんだから、悩んだとて時間の無駄」

それが彼女の口癖です。

彼女は、今は案外な田舎に住んでいます。
そんな田舎でも、中学生が自ら命を絶つ事件が起こっているのだと。
それについて、珍しく悩んでいました。

どこにでもあることですが、彼女の父親は少々ナイーブで、
3か月いいお父さんだったら、次の3か月鬱になりアルコールに逃げるという繰り返しの中で彼女は生きてきました。
悪いお父さんの3か月は家の中が荒れ、勉強をする環境もなかったと。

幸い、経済的には恵まれていました。

そんな時彼女が編み出したのは、「学校の授業中にすべて完結させる」でした。
学校の授業中にすべて覚えて、歩いている時にも頭の中で繰り返していれば、
応用問題とて解ける!と確信したのだそうです。
時間が限られているから、物事の大局を掴むのも早く、答えを出すのも早く、迷わない。
「あたしゃ、神童レベルでござんしたよ」といって、憚りません。
少々イラっとしますが、「確かに」と思えます。

しかし彼女は、かなりアナーキーに育ちました。
これは彼女の「自分自身を守る技」だったように、私は感じています。
そうすることで、自分自身の責任下にすべてを置くことを決め、親はもとより、人に責任を転嫁する道を絶ったのだろうと思います。

例えば、そうですね…
「母が重たい件」についての書籍などが、多く出回っていますね。
彼女は「母の所為で」とは決して言いません。
私から見た時に、「お母さまは相当に重たかっただろう」と、彼女を慮り、「それって多分、普通じゃない」と彼女を肯定的にとらえる私に対しても、

「こっちが母よりも悪いことをしたんだから、母をどうこう言う立場にない」

というのです。
いつでも、自分や母親などの家族を俯瞰的にとらえています。
ある種の冷淡さすら見られます。
自ら「母をどうこう言う立場にない」場所に身を置いて、「母が重たい」といった、彼女の言葉を借りれば「甘ったれた」ことを言いたくなる自分を戒めたのだろうと思います。
彼女の乗り越え方はそうだったのです。

「母が重たい」という人々と、彼女の考え方のどちらが正しいか正しくないのか、
それはわかりません。
しかし、そうやって彼女が思春期を過ごし、思春期を引きずりそうになるのを律し、そして生きているのは紛れもない事実です。

そんな彼女が、「なぜ死ぬ選択肢しか持たないのだ」と悩んでいたのです。

死ぬことに逃げるぐらいなら、今の現状からリアルに逃げて
逃げたことと引き換えに、
みっともなくても、赤っ恥をかいても、這いつくばってでも生きてゆくと決めればいい。

そうしてきた彼女が、
どうやっていれば、死ぬ、
それ以外の選択肢を探る心の芽を、もっと前に育てることができたのだろう。
と、今の子供たちに対し、悩んだのです。

この悩みは、私にも感染し、二人で悩みこんでしまう日が続きました。

私も、幼少期、あまり恵まれていたとは言えません。
お坊ちゃま育ちだった父は、南方での戦争体験があまりに辛かったのでしょう。
今の言葉でいえば、PTSDでしょうか。

生活は荒れていました。
3歳4歳の頃の私が、「一家を支えるんだ!」と、ぼんやりと、しかし妄信的に確信していました。
「この大人たちは、どうしようもない。私がシッカリしなきゃ…」
今、客観的に思えば、痛々しいことです。

そんな私でも、ついぞ気が付く
「うちは普通じゃない。もう支えきれない…」
の思いに潰れそうになり、
確かに選択肢を「死」にシフトしたことがありました。

そんな時、空に大きな虹が出ていて、ふととある店先に視線を向けると、
金魚鉢の中の金魚が瀕死でも口を水際にパクパクとさせ、
必死で生きようとする姿がありました。

虹は私に行く先には何かきっとあるから!と語り掛け、
瀕死の金魚は「最後まで必死で生きぬく」ということを教えてくれました。

私は踝を返し、荒れた家に戻ることを決め、時期が来たら私は飛び立とうと決めました。
本の中にある異国の町や、妖精の住む森を、きっとこの目で見ると。

宮本浩次さんと東京スカパラダイスオーケストラのコラボ楽曲「明日以外すべて燃やせ」の歌詞の中に、

死ぬまでずっといきてゆく
周回軌道の小さな世界
その外側もあるんだ

というのがあるのだそうです。
金魚の姿はそうであり、虹は周回軌道の小さな世界の外側を垣間見せてくれました。

自死を選んでしまった子は、この歌詞を知っていたのだろうか。
未来は僕らの手の中と叫ぶブルーハーツを知っているのだろうか。
聞こえてほしいあなたにも、ガンバレ!って。
ボウイのWELCOME TO THE TWILIGHTの中にある、「人混みが追い越してゆく」
あの歌詞を握り締めて、独り哀しみが過ぎるのをじっと待つあの感覚…。

と、これはデザイナーの受け売りです。
私は宮本浩次氏も、スカパラも、ましてやブルーハーツも、よくは知りません。

そんなことを話していた時期に、なんの啓示か、とある学校関係から彼女に
自殺防止のためのいのちの電話への誘導チラシを作ってほしいという依頼がありました。

彼女は作り始めましたが、「果たしてチラシだけで誘導できるのだろうか。」と考え始めました。
チラシで心を動かされる子は幸いで、電話をかけるアクションを起こせば、更に幸い。
しかし電話はつながりにくく、彼らを失望させるかもしれない。

電話をかける勇気がない子は?
電話をかける環境がない子は?
勇気を出して先生にお話ししたとて、
その「タスケテ」の声に耳を傾けることができない先生だったら?

様々な「これじゃだめだ」が、湧き出してきます。

私は「うちから何かできるんじゃないかしら」と提案しました。
当会は、挫折を事前に想像し、夢を叶える双六の講義を、関西学院大学にて行わせていただいた経験があります。

金銭的な計算をしないわけではありません。
データの制作費は彼女に一任するとして、印刷代等もバカにはなりません。
小中の子供たち全員に配るものですから、いくら町規模であっても、そこそこの枚数になります。
しかし、当会は「子供たちの生き抜く力を育む」ことや、
「自死の防止」などに対しての支援も行っていこうと決めていました。

良い機会を与えて頂いたな。やってみよう!
そう決めたのです。

制作にあたり、依頼を受けた町の教育委員会等の専門家にも監修いただくことができます。
これは当会にとっても大きなメリット。
望んで手に入るとは限らない機会です。

一人でも遊べるひとり双六、名付けて「ヒトスゴ」で、制作の予定です。
悩んで解決に向かって進んで行く双六です。

電話相談室に電話する手段を考えさせたり、
電話相談窓口に電話をしても、なかなか繋がらなかったり、
おともだちに相談して解決することもあれば、
クラス中に広まってしまい、悲しい思いをすることもあります。

いじめにあったときどうするのか。
ではいじめる側であったら?
いじめを見て見ぬふりをしてしまいそうになる時は?
いじめられる側ではなくて、ホッとしてしまう自分自身は?

いざ、おともだちの悩みに親身になって寄り添うと、依存が大きくなってこっちが潰れそうになってしまったり。

これって、大人の社会でも、ごく普通にあることなのですものね。
大人でも戸惑うのに、ましてや子供では、出口がないように思えても致しかたない。

そういった要素を盛り込んで、単純に進む樹形図のような双六を目指しています。
出来上がり次第、お知らせいたします。

私たちは、子供たちの生き抜く力を育む双六の作成を行うとともに、「自死の防止」などに対しての支援も行ってゆきます。