読書会からのスタート
2015年3月のことでした。
日本文学全集が発刊されることに触発され、日本文学全集を読んでみる読書会として、読書会・小さな靴あとを立ち上げました。
本を持ち寄る読書会ではなく、同じ本を会員で事前に読み、当日語り合うという形式での読書会です。
NHKの名番組、児玉清氏の「週刊ブックレビュー」の雰囲気を目指しました。
会員の方々の高いご教養に支えられ、順調に回を重ねた様に見えましたが、さにあらず。
古典の回になると、途端に会員の方々のモチベーションが下がりました。
それはもう明らかなもので、どうしたものかと思案する日々に…。
この会員の方々からの不人気の要因は、一般的な古典不人気の要因でもあるのではないか。
文字離れ、本離れが危惧されている昨今、このままでは古典なぞ、一部のファンだけのものになってしまうのではないか。
他の会員の方々と同じく、古典に苦手意識があった主催の私谷明子も、少々の不安を抱きました。
そこで友人のデザイナーに頼み、井原西鶴著『好色一代男』の回に世之介双六を作成しました。
友人のデザイナーは、本を渡されて「さぁ作れ」と言われるのですから、たまったものではありません。
彼女自身も古典を読むところから始めねばならないのですから。
「ゴリラもね、遊びの中から学習するんだよ!だから、解りにくいものも遊びの中から学べば絶対に興味が湧くのよ!」
しぶる彼女の説得は、ゴリラでした。
「だから、双六なのよ!」
解釈もコマ割りも、すべて彼女に丸投げでした。
幸いなことに、彼女は私よりはほんの少し、古典を知っていました。
平家物語の冒頭の1章や、枕草子の1章、伊勢物語の東下りを諳んじる程度ですが。
私に至っては、古典にさほどの造詣があるわけでもなく、
「私が楽しめる双六であれば、きっと誰でも楽しめて興味を抱いてくれる!」
そう信じました。
こうして出来上がったのが、「好色一代男・世之介双六」でした。
これが好評で、会員の方々は、遊ぶことに夢中になり、遊んだ後に本への興味を抱いてくれました。
「双六はいける」
確信した瞬間でした。
主人公世之介7歳から60歳までの人生を描いた「好色一代男」は、双六にぴったりの題材。
記念すべき第1作目の「好色一代男・世之介双六」の好評は、後に続く「日本霊異記双六」などの古典文学双六の大切な足掛かりとなり、
そして「自分史人生双六」の構想に導いてくれたものです。
2016年 読書会・小さな靴あとは、双六読書会・小さな靴あとに改名いたしました。
思い返せば、無鉄砲です。
双六を抱えては、あてがあるようなないような状況で、
「こんなことやっています!」と、様々な場所に飛び込んでいました。
今考えれば、まるで猪もいいところです。